放置している預金口座はありませんか?

放置している預金口座はありませんか?

何も使っていない預金口座を持っていないでしょうか。例えば、子どものころ親が作った口座、学生時代やかつての勤務先で作った口座など、思い当たる方がいるかもしれません。このように長期間使っておらず放置された預金は、休眠預金となっている可能性があります。
今回は、休眠預金とは何か解説した上で、休眠預金になってしまうとどうなるのか、休眠預金を作らないためにはどうしたらいいのかご紹介いたします。

休眠預金とは

休眠預金とは、2009年1月1日以降に取引した預金などがあって、そこから10年以上取引のない預金口座のことです。金融庁の資料によると2014年度から2016年度まで、毎年約1,200億円の預金が利用されず眠っていると記載されています。そのうち500億円程度は払い戻されていますが、残りの700億円が毎年、放置されているお金があるのです。このような背景から、放置されたお金を有効利用するという趣旨のもと休眠預金等活用法が2016年12月に成立し、2019年度から始まりました。

休眠預金の使い道

休眠預金は3つの使い道に活用されます。

  • 子ども及び若者の支援に係る活動
  • 日常生活又は社会生活を営む上での困難を有する者の支援に係る活動
  • 地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している支援に係る活動

といった公益に資する活動に活用されます。
2009年1月1日の10年目である2019年度、翌年2020年度は指定活用団体において運用の基礎的な仕組みを構築することが重要として助成額はそれぞれ40億円(2020年度は追加でコロナ枠50億円)となっており、総額100億円程度しか活用されていません。制度設計としては将来的に数百億円規模の資産分配が予定されているそうです。
日本以外にも休眠預金を活用している国は多く、休眠預金の管理方法はアメリカ、フランス、オーストラリアなどは州政府や国家予算に合算する方法です。日本、アイルランド、イギリス、韓などは別途資金の管理期間を置き、福祉分野など社会的な事業に重点的に活用するといった方法があります。

休眠預金の対象となる預金について

休眠預金の対象となる預金の種類は、銀行の普通預金や定期預金、ゆうちょ銀行の通常貯金や定額貯金、定期貯金、信用金庫の普通預金や定期積金などが該当します。なお、外貨預金や仕組預金、財形貯蓄は対象外です。

休眠預金になりそうな場合通知がきます

最後の取引から9年が経過し、休眠預金になりそうな預金がある場合、各金融機関のウェブサイトで公告されます。また、預金残高が1万円以上の場合、対象の金融機関から登録されている住所に通知書が郵送されるようになっています。通知が届けば対象の預金は休眠預金になりません。通知はメールアドレスを登録していれば、電子メールで通知される場合もあります。
ただし、1万円未満だと通知されません。また、1万円以上の預金があっても、金融機関の住所と現住所が異なる場合、通知が届かず、何も手続きをしないと休眠預金になってしまう可能性があります。住所や電子メールが変わった場合、注意が必要です。
また、10年以内に「異動」を行っていれば、休眠預金になりません。異動とは預金者が今後も預金を利用する意思をしめしたと認められる取引のことです。基本的に入出金が異動とみなされます。異動の定義は各金融機関によって異なるため、詳細は預金の金融機関に問い合わせください。
なお、イギリスや韓国では預金者が休眠預金を検索できるシステムがあるため、金融機関に問い合わせなくても休眠預金があるのか確認できます。日本にはそのようなシステムが今だにないのが現状です。

休眠預金になったらどうなる?

休眠預金は国のお金となります。ただし、休眠預金は国に預金を没収されたわけではなく国庫に入っただけで、手続きによって預金を受け取ったり、口座を解約することが可能です。2019年1月以降、休眠預金は預金保険機構に移管され、指定活用団体に交付。資金分配団体への助成など、公益事業に使われることとなります。
しかし、休眠預金になったとしても金融機関から預金を引き出すことは可能です。ただし、キャッシュカードを使ってATMから預金を引き出すことはできません。対象金融機関の窓口で手続きすれば引き出せます。また、休眠預金は即日の払い出しはできません。一般的に預金の払い出しは数日かかるため、休眠預金になる前に現金を引き出しておくといいでしょう。

使っていない預金口座のデメリット

使っていない預金口座の放置は、さまざまなデメリットがあります。「しばらく使う予定がないから、そのままだ」と放っておくと、損してしまう可能性も。預金口座を長期間放置して何が起こるのか問題点をまとめました。

お金の管理がしにくい

そもそも、預金口座が複数あるということは、それだけ預金が分散されていることになります。目的別に貯金しているなど、意図して分けているなら問題ありません。しかし、意味もなくあちらこちらにお金が分散していると、預金全体の把握が難しく、管理できなくなります。

お金を有効活用できていない

長期間放置している預金口座について、金利が何%なのか理解している人はほとんどいないのではないでしょうか。せっかく預けたお金を、利率もわからず放置するのはもったいない状況です。
都市銀行の普通預金金利は0.001%なので、比較的利率のいいネットバンクへ預け替えたり、使っていない預金口座の残高をまとめて好条件の定期預金に預ければ、少しでも多くの利息を得られる可能性があります。休眠預金も自分の資産です。有効に活用しましょう。

犯罪に使われてしまう危険性

いつも目の行き届いている口座であれば、異変があればすぐにわかりますが、何年も放置されている口座が、何らかの犯罪に使われた場合、気づくのが困難です。もしも不正利用された場合、金融機関が口座凍結しますが、凍結を解除するには様々な手続きが必要です。また、自身が不正利用していなくても確実に解除してもらえるわけではありませんので、勝手に口座が使われていないか確認しましょう。
なお、口座の譲渡は有償・無償問わず犯罪なので、使っていない口座があるからといって他人に渡さないようにしてください。

手数料がかかることも

近年、利用されていない預金口座の所有者に対して、手数料を課す銀行が出てきています。
りそな銀行は2年間使用していない口座に対して、年間1,320円の口座管理手数料を負担しなければなりません。三井住友銀行の場合、2021年4月1日以降に作られた口座のうち、2年間使用していない口座に対して、年間1,100円のデジタル未利用手数がかかります。ただし、両行とも免除条件が設けられています。
このような流れは今後、主流となっていくでしょう。現時点で手数料がかかっていなかったとしても、放置し続けると手数料が課せられるかもしれません。

休眠預金にしないためには

休眠予期になってしまうと、引き出すのに手続きに手間がかかってしまうので避けたいところ。休眠預金にしないためには以下の方法があります。

使わない預金口座はお金尾を移動するか解約する

使わない預金口座があればお金を移動するか、口座ごと解約しておきましょう。預金口座は「貯める口座」「使う口座」「増やす口座」など複数の口座を持っておくことも考えられますが、口座が多いほど管理が大変です。
また、預金残高が1万円未満だと金融機関から休眠預金の通知も来ません。お金を放置せず、預金口座の整理を検討してみてください。

金融機関に登録している情報を更新しておく

金融機関に登録していた情報に変更があれば更新しておくことも、休眠預金にならないための方法です。残高1万円以上で9年放置していると、金融機関から通知が郵送またはメールで届きます。しかし、金融機関に登録している住所やメールアドレスが最新の情報でなければ、通知が届きません。通知が届けば休眠預金にされないので安心です。金融機関によっては顧客情報を更新することで異動自由になる場合があります。
引っ越しをした場合、金融機関にも手続きをしておきましょう。

子ども名義の預金口座が休眠預金に

親が子供名義の預金口座を開設して貯蓄するケースの場合、子ども名義の預金口座があることを本人に知らせておかないと、将来的に休眠預金になってしまう恐れがあります。
たとえば、親が亡くなった場合、子どもを含む身内が財産を管理し遺産を相続します。その際、子どもが自分名義の預金口座の存在に気がつかない場合があるのです。
気づいたとしても払戻や解約には預金通帳や印鑑、本人確認書類、戸籍謄本など様々な書類が必要ですし、住所変更手続きや氏名変更手続きなどしなければならないこともあります。
もしも、そのような口座があれば速やかにお子さんに知らせておきましょう。

まとめ

休眠預金とは2009年1月1日以降、最後の入出金(異動)から10年以上経過した預金のことです。休眠預金になったとしても国に没収されるのではなく、手続きをすればお金は戻ってくることを覚えておきましょう。ただし、手続きに手間がかかるので、休眠預金にならないよう注意してください。休眠預金になってしまわないためにも、お金の管理は大切です。眠っている口座がないかチェックしておきましょう。
休眠預金の制度は政府発表の文書によると「本制度はわが国では前例のない、いわゆる社会実験である」と明記されています。制度の効果検証がいつ、どの時点でどのようにされるのか、現時点では不明ですが、効果によって私たちの社会生活がより良いものになるのであれば、良い実験といえるでしょう。
そうはいっても、自分のお金が活用されず眠っている状態というのは別問題です。休眠預金の制度をきっかけに、自分が持っている通帳を確認してみると、思わぬお小遣いになるかもしれませんよ。